過失割合に納得できない方へ

  • 保険会社から提示された過失割合に納得できない
  • 過失割合の修正を求めても応じてもらえない
  • 加害者が事故状況について嘘をついているため、過失割合が適正になっていない
  • こちらは悪くないのに過失があると言われている

当事務所でも、交通事故に遭われた方から過失割合についてご相談を受けるケースが多々あります。

「保険会社から提示された過失割合に納得できない」なら応じるべきではありません。過失割合は、物損の段階で早期に決められる印象がありますが、物損のみの過失割合というのは存在しません。のちのち人身傷害にも影響を与える例を見てまいりました。
物損、人身を通して、法的に適正な過失割合を確認し、保険会社からの提示がそれと違っていたら訂正を求めましょう。

今回は過失割合の適正な基準の調べ方や過失割合に納得できない場合の対処方法をお伝えします。

過失割合とは

過失割合とは、交通事故の結果に対する被害者と加害者の責任割合です。
過失とは、法律用語で「不注意」という意味です。具体的には、「損害の発生が予見可能であり、それを回避すべき行為義務があったにもかかわらず、それを怠ったこと」とされています。
つまり、過失相殺とは、事故の発生について、被害者にも過失(不注意)があった場合に、損害の衡平な分担の観点から、被害者側の責任割合相当分を被害者に生じた損害額を差し引くことをいいます。
多くの交通事故では、加害者の一方的な過失ではなく被害者にも一定の過失が認められます。
被害者に過失がある場合、加害者が全額の賠償金を負担するとかえって不公平なので、示談交渉の際にはお互いの過失割合を定めて損害賠償金額を調整するのです。

過失割合は、通常100%を基準にして被害者と加害者に数字を割り当てます。
たとえば被害者の過失割合が30%なら加害者の過失割合が70%となり、被害者の過失割合が10%なら加害者の過失割合が90%となります。

過失相殺による賠償金額への影響

被害者と加害者の過失割合によって被害者が受け取る金額を減額することを「過失相殺」といいます。

過失相殺を行うときには、被害者の過失割合に応じて加害者へ請求できる金額を減額します。たとえば被害者の過失割合が30%の場合、加害者へ請求できる金額は30%減となります。
発生している損害が1000万円でも、被害者の過失割合が30%であれば請求できるのは700万円に減額されます。
被害者の過失割合が高いほど過失相殺による減額率が高くなるため、被害者にとって不利です。示談交渉の際、自分の過失割合をなるべく小さくして高額な賠償金の獲得を目指すべきといえるでしょう。

過失割合を決める方法

交通事故で過失割合を決める方法は、主に以下の4種類です。

保険会社との示談交渉で決定する

被害者と保険会社の話し合いで過失割合を決める方法がもっとも一般的です。
保険会社が交通事故状況を検討して適正と考えられる過失割合を算定し、被害者に提示してきます。
被害者が納得して合意すれば、その過失割合をもとに過失相殺が行われます。

調停で決定する

被害者が納得しなければ、示談で過失割合を定められません。
示談が成立しない場合、裁判所で調停を申し立てる方法があります。
調停とは裁判所で話し合って賠償問題を解決する方法です。裁判所の調停委員が間に入り、事故状況をみて妥当と考えられる過失割合を提案してくれます。
被害者と加害者が両方とも納得すれば、調停が成立して過失割合も決まります。

ただし調停は話し合いで解決する方法であり、結論を強制できません。合意できなければ不成立になります。

ADRで決定する

示談が決裂したとき、ADRで過失割合を決定する方法もあります。
ADRとは、裁判外の紛争解決機関を使って賠償問題を解決する方法です。
交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故法律相談センターが特に有名で、利用者数も多数です。

ADRでは、和解あっせんと審査の2種類の手続きを利用できます。
和解あっせんでは、ADRの担当者を間にはさんで被害者と加害者が話し合いを進めます。合意ができれば過失割合を定めて賠償金額を算定し、和解金の支払いを受けられます。

あっせんを受けても当事者が合意できない場合、審査請求を利用できるケースもあります。
審査とは、ADRが適正な賠償金額を算定する手続きで、事故の状況に応じた過失割合の算定もしてくれます。

相手がADRと協定を締結している保険会社や共済組合の場合、保険会社や共済組合は審査結果に拘束されるので、被害者さえ納得できれば最終解決できます。
被害者は審査結果に拘束されないので、納得できなければ訴訟を申し立てて争ってかまいません。

なお保険会社は交通事故紛争処理センターと協定を締結しているケースが多く、共済組合は日弁連交通事故紛争処理センターと協定を締結しているケースが多数です。相手により、ADRを使い分けるとよいでしょう。

訴訟で裁判所が決定する

示談が決裂したとき、調停が不成立になったとき、ADRの結果に納得できないとき、いずれの段階でも訴訟を起こせば過失割合を決めてもらえます。

訴訟では、裁判所が法的な基準にあてはめて過失割合を算定します。当事者は両方とも裁判所の決定内容に拘束されるので、最終解決となります。

ただし被害者が有利な判決を獲得するには、証拠が必要です。事故状況を示す十分な証拠がなかったら、相手の言い分がとおって被害者に高めの過失割合を認定されてしまうでしょう。訴訟を提起するときには、必ず交通事故に詳しい弁護士に依頼すべきです。

過失割合の適正な基準

示談交渉の際、保険会社から提示される過失割合は必ずしも適正とは限りません。

交通事故には、事故状況ごとに法的な過失割合の基準があります。
裁判所はその基準によって過失割合を定めるので、示談の際にも適切な過失割合を調べて適用すべきです。

基本の過失割合と修正要素

事故の類型ごとに「基本の過失割合」が定められていますが、個別事情により、基本の過失割合は修正される可能性があります。

たとえば以下のような事情があれば、過失割合は修正されます。

  • スピード違反
  • 飲酒運転
  • 無免許運転
  • 大回り右折
  • 早回り右折
  • ウィンカーを出していなかった
  • スマホやカーナビを見ながらの運転
  • ふらふら歩き
  • 無灯火運転
  • 2人乗り
  • 被害者が子どもや高齢者、障害者

事故が起こった時間や場所などによって過失割合が修正されるケースもあります。

保険会社から過失割合の提示を受けたら、鵜呑みにせずに修正要素を含めて適正な数字になっているのか、検討すべきです。

加害者が嘘をついているときの対処方法

交通事故後、加害者が自分に有利になるように事故状況について嘘をつくケースも少なくありません。たとえば加害者が信号無視していたのに「被害者の方が赤信号でつっこんできた」と言ったり「被害者がスピード違反していた」などと言ったりする場合があります。

保険会社が加害者の言い分を信じると、事故の前提条件が誤っているので適正に過失割合が算定されません。

正しい事故の状況を明らかにするため、以下のような対応をとりましょう。

  • 依頼者の言い分をまとめる
  • 刑事事件記録を収集する
  • 物件事故報告書を収集する
  • その他ドライブレコーダーの動画、調査報告書の作成など

ドライブレコーダーを分析する

自動車にドライブレコーダーを設置していたら、事故の状況が映り込んでいるはずです。
まずは自分のドライブレコーダーの画像を分析しましょう。
加害者側がドライブレコーダーを設置していた場合には、提示を求めることも可能です。
相手が提示を拒否する場合、裁判を起こせば文書提出命令によってドライブレコーダーの開示を求められます。

実況見分調書や供述調書を取り寄せる

実況見分調書は事故直後に当事者立会のもと、警察官が作成する資料です。事故の状況が正確に記載されているケースが多いので、事故状況を明らかにできる可能性があります。加害者の供述調書にも、事故直後の正直な加害者の認識が反映されているケースが多々あります。
検察庁に照会して取得し、内容を分析しましょう。現在の加害者の言い分と異なっていれば、加害者が虚偽を述べていることを証明できます。

目撃情報を集める

目撃者がいる場合には、目撃証言も証拠になります。ただし後から目撃者を見つけるのは簡単ではありません。できれば事故現場でその場にいた人に声をかけて協力をお願いしておきましょう。

信号サイクル表を取り寄せる

信号機の色について争いがある場合、信号サイクル表を取り寄せて分析する方法も有効です。
信号サイクル表とは、信号機の色の変化のサイクルをまとめた表です。
ある時間における信号機の色を特定できるので、加害者の嘘を暴ける可能性があります。

適正な過失割合の調べ方

法的に適正な過失割合を知りたい場合、本を購入して自分で調べる方法があります。
「別冊判例タイムズ」という本には交通事故の状況ごとの基本の過失割合や修正要素がまとめられています。事故状況を照らし合わせれば、妥当な過失割合がわかるでしょう。
ただし本の見方がわからない方も多いですし、どの修正要素を当てはめるべきかわからなかったり間違ったりする人も少なくありません。

自分で本を見て調べるのが難しいなら、弁護士へ相談してみてください。
事故の状況をおうかがいして、正しい過失割合を算定いたします。

過失割合に納得できない名ら弁護士へ相談を

保険会社から提示された過失割合に納得できない場合、弁護士へ相談するのが解決への一番の近道です。
弁護士であれば、間違いなく正しい過失割合を提示できます。
加害者が嘘をついている場合にも、実況見分調書の取り寄せ、ドライブレコーダーの分析等行って、正しい事故状況を明らかにできます。
保険会社との示談交渉も代行できますし、訴訟になった場合にも適切に対応して有利な結果を獲得しやすくなるものです。

当事務所では名古屋を中心に交通事故に遭われた方から多数のご相談をお受けしており、過失割合についての争いも解決してきた実績があります。お困りであれば、まずは一度ご相談ください。

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