交通事故で裁判すべき状況、流れや費用、メリットデメリットを弁護士が解説
交通事故後、相手と示談交渉しても合意できなければ「裁判」を起こさねばならないケースもあります。
- できれば裁判はしたくない
- 弁護士なしで、裁判を1人で進められるのだろうか?
- 裁判にどのように対応すればよいかわからない
お悩みであれば、まずは弁護士へご相談ください。
そもそも交通事故の裁判とはどういった手続きで、どのような状況になったら提訴すべきなのか、裁判と示談の違いや流れ、費用、有利に解決する方法を含めて解説します。
交通事故の裁判とは
交通事故の裁判には、民事裁判と刑事裁判があります。
これらのうち、示談が決裂したときに被害者が損害賠償金を求めるための裁判は、民事裁判です。刑事裁判は加害者へ処罰を与えるための手続きなので、被害者は直接関与しないのが一般的です。また刑事裁判で加害者が処罰されても、被害者には賠償金が入ってきません。
被害者にとって慰謝料など,特に重要なのは民事裁判といえるので、この記事でも主に民事裁判について解説します。民事裁判は「民事訴訟」ともよばれます。
民事裁判では、裁判所が被告(加害者側)に交通事故にもとづく損害賠償義務があるのか、あるとすればいくらの支払い義務があるのかを判断します。
結果は判決によって告げられ、加害者に支払い義務が認められる場合には支払い命令が下されます。
加害者が判決に従わず支払いをしない場合、被害者は加害者の財産を差し押さえて賠償金を回収できます。
裁判の大きな特徴は、お互いに合意できなくても裁判官が強制的に支払い命令を出してくれる点です。
交通事故で裁判すべき状況
以下のような状況となったら、裁判を検討しましょう。
保険会社と示談をしても合意できない
保険会社との間で過失割合や慰謝料、逸失利益の金額などについて剥離があり、話し合ってもどうしても合意できない場合には裁判すべきです。
裁判をすれば裁判所が過失割合や慰謝料などの賠償金の金額を定めてくれるので、解決できます。
保険会社が示談に対応しない、保険金支払いを拒否された
相手が保険に入っていても、保険会社が支払いを拒絶するケースがあります。
示談を進められないので裁判を起こさねば賠償金を払ってもらえません。
相手に保険会社がついておらず話し合いを進められない
加害者が保険に入っていない場合や、入っていても適用されない場合には加害者本人と話し合う必要があります。
連絡しても無視される、支払いを拒否される、感情的になられて話ができないなどの困難な事情があれば、裁判を起こして賠償金を請求しましょう。
交通事故裁判のメリットとデメリット
交通事故で裁判を起こすかどうか迷ったら、メリットとデメリットの両面から比較してみるべきです。
メリット
相手が拒否しても支払いを受けられる
示談では、相手が拒否すると賠償金の支払いを受けられません。
裁判であれば裁判所が支払い命令を出してくれるので、相手が拒否していても賠償金の支払いを受けられます。相手が判決に従わなければ差押えによる回収もできます。
過失割合や後遺障害の等級が適正になる
相手の保険会社と交渉しても、過失割合について合意できない事例が少なくありません。後遺障害等級認定についても納得できない結果となるケースはよくあります。
裁判では、適正な過失割合の認定も受けられますし、後遺障害の等級も定めてもらえます。
結果として被害者側の過失割合が下がったり後遺障害の認定等級が上がったりして賠償金がアップする可能性があります。
賠償金額が増額される可能性がある
保険会社と裁判所では、採用する賠償金の計算基準が異なります。
保険会社は独自の任意保険基準で計算するので、賠償金の金額を低くされてしまいます。
裁判所では慰謝料や休業損害などの賠償金を法的な基準で計算するので、保険会社基準より賠償金が大きくアップするケースが多数あります。
遅延損害金や弁護士費用を請求できる
裁判で判決を出してもらう場合、損害賠償金に遅延損害金や弁護士費用を足してもらえます。
交通事故後長い時間が経っていると、遅延損害金だけでも数百万円単位となるケースが少なくありません。示談や調停、ADRではこれらの費用を要求できないので、裁判ならではのメリットといえます。
デメリット
手間と時間、費用がかかる
裁判には多大な労力と時間がかかります。
提出文書の内容は法律的に整理しなければなりませんし、大量の資料も集めなければなりません。弁護士に依頼しなければ本人が何度も裁判所に通わねばならず、尋問が行われる可能性もあります。時間もかかるので、提訴するなら最低半年は覚悟しておいた方がよいでしょう。裁判所に払う印紙代などの費用がかかりますし弁護士に依頼したら弁護士費用も発生します。
敗訴リスクがある
裁判しても、必ず勝てるとは限らず、敗訴するリスクがあります。
負けたら「示談で解決しておいた方が得だった」という結果になる可能性もあるので、提訴前に「勝てる見込みがあるかどうか」慎重に検討すべきです。
交通事故の裁判を申し立てる方法
交通事故で裁判を申し立てるには、以下の手順で進めましょう。
書類や資料を集める
裁判を起こすには、必要書類や証拠を集めなければなりません。
- 交通事故証明書
- 診断書
- 診療報酬明細書
- カルテ
- 実況見分調書
- ドライブレコーダーの記録
- 収入の証明書
- 後遺障害等級の認定書類
- 後遺障害診断書
- 休業損害証明書
- MRIやCTなどの画像
- 相手の保険会社の商業登記簿謄本
上記以外の書類が必要なケースもあります。
訴状を作成する
次に「訴状」を作成することになります。訴状とは、原告(訴える人。交通事故裁判の場合には被害者)の主張内容を法的にまとめた書類です。
法律的な要件に沿って記載しなければならないので、自分で正しい作成方法がわからない場合には弁護士へ相談することになります。
裁判所へ提出する
訴状と証拠を用意できたら、裁判所へ提出します。この場合は弁護士に委任をすると良いでしょう。
土地管轄は、原告の住所地や被告の住所地、交通事故現場がある住所地の裁判所です。
原告の住所地の裁判所を選ぶと、期日にも出席しやすく便利でしょう。
請求額が140万円以下の場合には簡易裁判所、140万円を超える場合には地方裁判所が管轄します。管轄を間違えると手続きをスムーズに進められないので、正しい裁判所を調べて書類を提出しましょう。
なお提訴方法は、裁判所への持参でも郵送でもかまいません。
交通事故の裁判にかかる費用
交通事故の裁判を起こすときには、費用がかかります。
主な費用は「印紙代」と「郵便切手代」です。
印紙代は「請求額(訴額)」に応じて異なるので、以下で一覧を示します。
請求額(訴額) | 印紙代 |
---|---|
100万円まで | 10万円ごとに1000円 |
100万円~500万円まで | 20万円ごとに1000円 |
500万円~1000万円まで | 50万円ごとに2000円 |
1000万円~10億円まで | 100万円ごとに3000円 |
たとえば200万円請求する場合であれば、印紙代は1万5000円です。
1000万円の請求であれば5万円の印紙代がかかります。
郵便切手代は各地の裁判所によっても異なりますが、おおむね5,000~8,000円程度です。
詳細は裁判所へ問い合わせて確認しましょう。
交通事故の裁判の流れ
交通事故の一般的な裁判の流れをご説明します。
STEP1 提訴(裁判の申立)
まずは訴状や証拠書類を揃えて裁判所へ提出します。
受け付けられると裁判所の担当部署が決まり、原告と被告へ第1回目の期日の呼出状が送られてきます。
被告は裁判所の定める期日までに答弁書を提出しなければなりません。
STEP2 第1回期日
第1回期日には原告と被告が提出した書類をそれぞれ確認し、次回以降の予定や第2回目の期日が設定されます。
弁護士を立てている場合、本人は出席する必要がありません。
STEP3 争点整理
第2回目以降の期日では、原告と被告がお互いに主張書面や証拠を提出し合って争点の整理を行います。
争点整理の期日も、弁護士を立てていれば本人が出席する必要はありません。
STEP4 尋問
争点生理が済んだら、当事者や証人の尋問を行います。
証人となるのは目撃者や治療を担当した医師などです。
本人尋問が行われる場合、弁護士を立てていても本人が出席しなければなりません。
STEP5 判決
尋問が終わってすべての審理が集結すると、結審して判決が言い渡されます。
STEP6 和解について
交通事故の裁判は、和解で終了する割合が高い手続きです。
和解とは、裁判の途中で当事者が話し合って解決する方法です。
裁判所から和解の勧告があったり和解案を示されたりして、当事者が納得すれば和解が成立します。
和解すると、敗訴リスクを避けられます。ほぼ確実に相手から支払いを受けられますし、裁判を早期に終了させられるなどのメリットもあります。裁判所から和解を勧められたら、一度話し合いの席について条件を検討しましょう。
交通事故の裁判には弁護士が必要
交通事故の裁判に対応するには、法律の専門知識やスキルが必須です。
特に相手が保険会社の場合、確実に弁護士をつけてくるので被害者のみが本人対応では極端になってしまうリスクが高まります。
また訴訟にはメリットだけではなくデメリットもあるので、そもそも裁判を起こすべきかどうかについても正しく判断しなければなりません。
当事務所では名古屋や東海エリアで交通事故被害者さまへのサポートに力を入れて取り組んでいます。お困りの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。